4月に赴任した僕は、地元の方に提案するため、洋野町の体験教室を自分でも体験していた。まずは、洋野町内においても有名な「おおのキャンパス」に足を運び、体験工房に足を運ぶ。
いつもの駐車場より場所が上の、体験工房用の駐車場に車を留めて、足を進ませる。
「いろいろな体験があるんだな」
体験工房はひとつらなりなりに、細長い建物がある。その建物は、体験ごとに分けられていて、陶芸工房、ガラス工房、裂き織り工房があった。
1 迷い
「どの工房に入ろうか」
初めての工房体験だから、優柔不断になる。3つのうち、いつかはすべて体験することになろうが、まずは陶芸工房に入ることにした。
ドアを開けて、多くの陶芸品が並び、その先に職員さんがいた。
「いらっしゃい」
「こんにちは! 体験をしたいのですができますか?」
「できますよ、あの3つのメニューの中から」
2 選択
職員さんが指さした先には、メニューが書かれた掲示物がある。ろくろ体験、手びねり体験、絵付け体験があり、価格もそれぞれだ。ちょうど、財布に少ない現金しかなかったから、「手びねりでお願いします」と申し出た。
「それじゃ、あそこに座ってください」
建物の中のテーブルに案内され、そこに座る。そして、講師の方に粘土を渡されて、お手本を見せてくれる。
3 手びねり
手びねりとは、手で粘土の形を作る体験だ。最後は御椀か、湯飲みになる型を、自分の手で作る。
まず、粘土を薄く、楕円か円形に整え、椀の底を作る。これが、講師の方はかんたんにやってみせたのだが、初心者の僕がやると適切な薄さと丸さにならない。
「なんで、あんなにかんたんなように見せる職人技すごいな..」
このような感嘆から手びねりが始まった。
4 渦巻
底を作ってから、粘土を適切な大きさにひきちぎり、細長く伸ばす。それを、底として作った粘土の上に、一周にくるっと積み上げていく。
講師の方は簡単に「ほら」と見せてくれたが、手先と理想の形が思うように行かない。
「これ、縄文時代の作り方なんだ」
手を動かしながら、周りの資料を眺める。日本にあるいろいろな陶芸品や粘土についてだ。そこに、縄文時代に手びねりのように土器を作っていたと書いており、何万年前かもわからない時代に思いを馳せる。
そうこう考えているうちに、巻き目もどんどん積み重なってきた。「もっときれいにできるよ」と、講師の方からくしのようなものを渡され、表面が滑らかになるように整える。
「できました!」
自信はなかったけれど、一応全力は尽くした。手は粘土に染まり、自分の頑張りが伝わってくる。講師の方にお願いして、湯飲みの底に自分の番号を書いて、焼き上がりを待つ。焼き上がりには1~2ヵ月かかる。
そして、手を洗って講師の方に質問した。
5 お話
手を洗い、お金の支払いを済ませた後に講師の方とお話をした。僕は、子どもの好きや個性を伸ばす活動をする一歩として、体験教室のリサーチをしていた。
「過去にどのような団体の受け入れがありますか?」
「うーん、いろいろな小中学生や、福祉施設の受け入れもありますね」
講師の方は丁寧に質問に答えてくれて、とても勉強になった。団体受け入れも最大10名までは可能だ。
「ありがうございます!」
ウニの陶芸の貯金箱に惚れ惚れしながら、工房を出た。
「あのウニの陶芸、ヒロノバにもあったな」
工房体験によって、陶芸の奥深さを知れた。まだ未熟だが、粘土も大野の土を使っていて、「粘土の作るまでの流れも体験できますか?」と貪欲な質問をしてしまう。さすがにそれは手間と時間がかかるから難しいかもねとは言われたものの、このような活動に興味を抱く方が表れたとき、積極的にコーディネートしていく。
